空を飛んで会いにこい 第六話(6) 〜岡田side〜
第六話 泡モノ系にはこだわりなし(6)
この後、中谷がさっきの映画を見ようと言い出し、久しぶりに俺も見ることになった。
案外二人とも冷蔵庫へとビールを取りに行く以外、寡黙に見入っていた。
そんなにマジで見る作品でもなかったんだけどな、これ。
「なんっか超懐かしかったなぁ〜やっぱ。岡田んち思い出した」
「だから、ここも俺んちだっつってんだろが」
「ふぁ〜、このまま俺、ザ・フー聴きながら岡田に抱かれきって死にたいよ、なんとなく」
「あんな映画見てどこに結びついてんだよ?! なんとなくで言うことかバーカ! おまえの遺体なんか運ぶ気ねーぞ!」
「え〜!? じゃあこの部屋で、しばらく俺に添い寝で死体遺棄してくれんのかよ? おまえ、そういうディープな愛のカタチはどうかと……イヒヒッ!」
「気持ち悪い笑い方すんなっ! 俺は犯罪者かっ!」
「だってよ〜、岡田は結婚したかと思えば独り身に戻って、俺の前にふいに現れてさー。昔は若さゆえの情熱とか独占欲だけだったかもしれないが、今はそういうんじゃないんだぜ?」
「じゃあ何なんだよ? それ」
「安らぎっての? こういうゴロゴロしていろんな話とか出来る安堵なんだよなぁ、今俺、岡田から欲しいモノって。だからさー、こんなに和んでる最中で、しかもおまえに抱かれて逝ってしまえりゃさー、俺の頭ん中はずっとハッピーなままじゃねえかって…。へへっ、まさかさー、こんな復活劇あるとは思ってなかっただけにー、これでも俺、相当ポジティブシンキングになってんだぜ?」
「どんなポジティブシンキングだよ? 聞いたことねえよ」
「映画みたいに、絶壁からバイク投げ飛ばしたら、今度こそ生まれ変わってみせるぜ〜! みたいな」
「相変わらずわっけわかんねえなあ、おまえって」
「…デへへッ、久しぶりにこうさー、気持ちが燃えてくる、…おい岡田、ちょっと触らせてみろよ!」
「セクハラオヤジかよ! おまえ性欲じゃねんだろ? 今欲しいモノは。…いや、もう言うな、おまえの一言一言がどうにも変に刺さる、っていうか怖い。刹那的妄想すんな、俺が実は怖がりなの知ってんだろが」
「っふっ…あははは!! バカ可愛いなあ岡田! 何いちいちマジに考えてんだよ? もっとここは軽めにツッコミ入れとけよ、バツイチのくせして」
「ツッコミにバツイチは関係ないだろ!」
この後も中谷は、俺を茶化すような言い種であれこれと話し続けた。
ここでの時間が中谷にとって多少癒しにでもなって、それで気分良く家へ戻れるならまあいいか…とか、夫婦で安らぎ求められないんじゃ、そりゃやっぱり離婚じゃねえのか? とか、俺はこれでも色々考えちゃいる。
だが、俺独自の意見なんか吐いたところでどうにもならないだろう?
相手のことも俺は知らないし、それに、…中谷のすべてを分かってやれてるわけじゃねんだから。
それなのに一体、…冴子も中谷も、俺に何を求めてるんだよ?
「おい、どした? よく見りゃ岡田、お疲れの顔だよなぁ、それ。会社でなんかあったか?」
「…ねえよ。悩み多きおまえに心配されるようになっちゃ、俺もおしまいだ」
上手く説明出来ない、この妙なジレンマ。
不思議と最近、増えている気がする。
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